「DOLLMAGE」”人形”を巡る美術展

EXHIBITION

「DOLLMAGE」”人形”を巡る美術展

会  期 2021年3月16日(火)-3月23日(火)
会場時間 11:00-19:00(最終日は17:00まで)
休館日   会期中無休
料  金 入場無料
会  場 TIERS GALLERY
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-7-12
出品作家 柿坪満実子, 三谷和花, MOYAN, 山﨑稚子, 吉野俊太郎
メインビジュアル WAKICO

“人形(ニンギョウ/ヒトガタ)”をめぐる美術展を開催いたします。
 人形は遠く紀元前からの人類の営みを物語るオブジェクトとして広く各地に発見されていますが、その多くが宗教的、呪術的な目的を抱えていたとされています。たとえば人形劇研究家の加藤暁子氏の著書『日本の人形劇』の中では、「小さい人間」として人間を比喩する存在であり、上から吊り下げられることによって人間と同じ地に立つことができていた、マリオネットのようなヨーロッパの人形像と比較して、日本の人形の源流は神事にあり、神社の祭礼などで神を喜ばせるものあるいは神に代わってに祝福をさずける存在として文楽のように下から差し上げられることが多かったと指摘されています。そうして加藤氏によって「神と人とのあいだをとりもつメッセンジャー」と喩えられる人形たちは吊り下げられるにせよ、下から差し上げられるにせよ、人とと物との境界に立ち上がる一つのオルタナティブな人格として、不思議と現代においても人々を魅了して止みません。本企画ではそんな現代社会の中で未だ「小さい人間」としても「メッセンジャー」としても大きな役割を持ち続けていると考えられる“人形”に強く関心を持つ作家5名(柿坪満実子/三谷和花/MOYAN/山﨑稚子/吉野俊太郎)が集結し、展覧会を構成します。

キリスト教の家系に生まれた柿坪は、自身もメダイなどの原型制作などに仕事として携わる一方、人類創造の神話に着想を得たヒトガタの作品を、テラコッタの技法を中心にして制作しています。三谷はメルちゃん人形からラブドールまで、現代において「玩具」として扱われているニンギョウたちの姿態を(時には化粧を施しながら、)写真に収め、人間とモノとの境界線を探ります。既に画家として多くの展覧会で成功を収めてきたMOYANは古今東西の人形をモチーフとしながら、自身の身体観とその社会性を出発点とした鮮烈な作品を制作し、観る者の内面に強固なメッセージを投げかけます。京都府出身の山崎は布と糸とを使って、不穏さ漂うヒトらしきシルエットを多く縫い上げてきました。時には仏像、時には天使などのイメージを抱える作品らは総じて縫い目をこちらに見せ、見る者の感情を幸福と不安の両端に引き裂くような効果を孕んでいます。「操演」をキーワードにした彫刻研究を行う吉野は、美術や演劇や人形劇などの異なるジャンルを舞台の名の下に接続し、身体とモノを隔てていた境界線の危うさを批評する作品を制作します。
 本展のタイトルである「DOLLMAGE」は、Martine Leavittによって書かれたファンタジー小説『TheDollmage』 (2001)に登場する賢女の呼び名から引用しています。Dollmageが作る人形は未来を左右する力を秘めており、それによって村は統治され守られてきました。本展で展示される作品はこのDollmageによって作られた人形らと同じようにただの無力なオブジェとしてではない、より高い象徴性と機能性とを兼ね備えたアイテムとして、展覧会を通して書き換えられ、再考されていくことでしょう。

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