キリスト教の家系に生まれた柿坪は、自身もメダイなどの原型制作などに仕事として携わる一方、人類創造の神話に着想を得たヒトガタの作品を、テラコッタの技法を中心にして制作しています。三谷はメルちゃん人形からラブドールまで、現代において「玩具」として扱われているニンギョウたちの姿態を(時には化粧を施しながら、)写真に収め、人間とモノとの境界線を探ります。既に画家として多くの展覧会で成功を収めてきたMOYANは古今東西の人形をモチーフとしながら、自身の身体観とその社会性を出発点とした鮮烈な作品を制作し、観る者の内面に強固なメッセージを投げかけます。京都府出身の山崎は布と糸とを使って、不穏さ漂うヒトらしきシルエットを多く縫い上げてきました。時には仏像、時には天使などのイメージを抱える作品らは総じて縫い目をこちらに見せ、見る者の感情を幸福と不安の両端に引き裂くような効果を孕んでいます。「操演」をキーワードにした彫刻研究を行う吉野は、美術や演劇や人形劇などの異なるジャンルを舞台の名の下に接続し、身体とモノを隔てていた境界線の危うさを批評する作品を制作します。
本展のタイトルである「DOLLMAGE」は、Martine Leavittによって書かれたファンタジー小説『TheDollmage』 (2001)に登場する賢女の呼び名から引用しています。Dollmageが作る人形は未来を左右する力を秘めており、それによって村は統治され守られてきました。本展で展示される作品はこのDollmageによって作られた人形らと同じようにただの無力なオブジェとしてではない、より高い象徴性と機能性とを兼ね備えたアイテムとして、展覧会を通して書き換えられ、再考されていくことでしょう。
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