新しい価値の創造に挑む

Creating New Values

荒川技研工業は、自社で開発した無限の可能性を秘めたワイヤー金具の調整機構「ARAKAWAGRIP」をもとに、建築家やデザイナーとの協働によって次代を拓く新しい価値の創造に挑戦し、多彩な使い方や空間づくりを国内外で展開する。

「ないものを創る」という理念のもとに

創業者であり、工学博士の荒川秀夫は、「ないものを創る」という理念を掲げて1973年に会社を立ち上げ、その2年後の1975年に、世界に先駆けてワイヤー金具の調整機構「ARAKAWAGRIP」を開発。この技術を用いたさまざまな用途製品を開発し、製造、販売事業を展開してきた。現在は息子たちがその理念を受け継ぎ、同社を牽引する。長男の創(はじめ)が代表を務め、二男の均(ひとし)が企画・製造を、三男の真(まこと)がマーケティング&セールスプロモーションを担い、「ARAKAWAGRIP」のさらなる可能性を求めて、新しいものづくりに挑む。

創業者・工学博士の荒川秀夫。創業時1973年にて。
1975年に開発した「ARAKAWAGRIP」。品質を保証する、社名が刻印されている。
見本市では、毎回、クリエイターと協働して新しい可能性に挑戦している。デザイン/Sol Style(JAPAN SHOP2015のブースデザイン)
自社ショールーム「TIERS」では、多彩な展示を開催。作品/野老朝雄「CONNECT」展(2017)

最新の機械を導入し、質の高い製品を生産する

「ARAKAWAGRIP」を製造する所沢の自社工場では、材料の仕入れから機械加工、検品・組立、検査、梱包・発送まで一貫した生産体制を整える。カタログに掲載している製品数は、約500点。そのうち、常時、生産しているのは、約300点。多様な要望に応えるために、少量多品種生産を行なう。最新の機械設備を導入し、良質な材料を厳選して高度な加工技術による質の高い製品を生産する。時間の短縮や製造コストの削減を図り、生産性の向上と安定した供給にも努めている。

材料仕入れ:ステンレスや真鍮などの材料は、すべて品質の高い日本製のもの。
機械加工:工場内には、切削や研磨を行なう機械が並ぶ。
機械加工:最新の機械で効率的に材料を切削する加工技術をもつ。
検査:新製品を開発した際は、計測機器を使って耐久性や強度を検査する。

人の手と目で確認し、丁寧なものづくりを大切にする

組立や検品、独自の厳格な規格に基づいた全数検査は、機械を活用しながら一つひとつ手作業で行なうなど、効率性と丁寧さを追求した人の技術も大切にしている。「最新の機械」と「人の技術」を両立させたものづくりが、「信頼と技術のアラカワ」として世界に評価されている理由でもある。また、工場では製造部門を担う二男の均を中心に、新しいライフスタイルを提案する新製品の開発にも力を注いでいる。

検査:寸法、傷、メッキ加工の仕上がりなど、厳しい社内規格のもとで検査する。
検品・組み立て:人の手と目で一つひとつ検品しながら組み立てていく。
検品・組み立て:冶具や機械を使って効率的に組み立てる。
梱包・発送:膨大な品種の製品を丁寧に梱包、発送までを一体的に行う。

新しい物の価値が生まれる場所

約500種類という膨大な製品点数があり、その活用方法は無限の可能性を秘めている。どの製品を選んで組み合わせれば、今までにない豊かな空間を生み出せるか。そのためにはまず思いや考えを聞き、実際に製品を前にして可能性を探りながら、そのかたちをともに見つけ出していくことが必要になる。そこで実験や試作に挑む場として、あるいは建築家やデザイナーといったクリエイターの多彩なアイディアが集まり、新しい物の価値を生み出す創造の場をつくろうと、2017年に東京・表参道に「TIERS(荒川技研工業ショールーム)」は誕生した。創業時からの「ないものを創る」という理念のもと、ここからさらに新しい試みに挑戦し、次代に向けた新しいものづくりのかたちを切り開いていく。

ショールーム2階。製品や展示例を見ながら、打ち合わせができるスペースになっている。建築設計/田邊 曜
外観。建築用ワイヤーをファサードデザインとして使用している。ファサードデザイン/野老朝雄
自社の代表的な製品計200点以上がアクリルの棚に並ぶ。
ショールームでは、実際に吊るすなどして試作の検討・テストも行なわれる。