ARAKAWA 50 GRIPS

Story

ともにつくるのは見たことのない世界

荒川技研工業の技術は、人々の想像力を前に進めるためにあります。工学博士の荒川秀夫が掲げたのは「ないものを創る」という理念。今でもピクチャーレールに使われている、ワイヤーに固定して調節するという機構が「ARAKAWA GRIP」の始まりです。
色々な空間をつくるお手伝いを、さまざまな人と一緒に世界中でしてきました。美術館やギャラリー、店舗や住宅など、使う人の数だけ使われ方も増えました。「もっとこうしたい」に応え続けて、カタログの商品は500点以上になりました。
安心して使える部品を、美しいデザインで。荒川技研工業はこれからも、人々とともにつくり続けます。

ともにつくるのは見たことのない世界ともにつくるのは見たことのない世界

三者三様の視点から新たな表現に貢献する

「ARAKAWA GRIP」をはじめ、荒川技研工業の製品は国内外のさまざまな場で活用されている。その背景には、確固たる製造品質のさらなる向上やユーザーであるクリエイターとのコミュニケーション、ニーズを汲んだ新たな技術開発が積み重ねられていることをご存知だろうか。そして、それらの作業は、創業者・荒川秀夫の子息である創、均、真の三兄弟が中心となって進められている。主に創が会社経営を、均が企画・製造を、真がマーケティング&セールスプロモーションを担い、三者三様のスタンスを取りつつ、互いの強みを頼りながら、まだ見ぬ表現への貢献を目論んでいる。彼らの目には、荒川技研工業がどのように映っているのだろうか。それぞれの言葉から、企業姿勢や製品に対する共通したまなざしが見えてきた。

三者三様の視点から新たな表現に貢献する

熱意と協創はものづくりに欠かせない

荒川 創

荒川技研工業代表取締役

私の名前には「つくる」を意味する「創」の字が当てられているが、「ないものをつくる」という会社の理念そのものが表されていることを入社後に初めて知った。自分が生まれた年と父が会社を設立した年がほぼ同じなので、50年経ったことは感慨深い。なお、ARAKAWA GRIPが誕生したのは、私が幼稚園の頃だった。幼少期、毎年3月に開催される店舗総合見本市「JAPAN SHOP」に向け、兄弟でカタログにチラシを挟み込む作業を手伝った思い出がある。
荒川技研工業は、主戦場とする業界が定まっていない中で創業し、黎明期は会社として存続できるかも不確かだった。父親から跡を継ぐようにと誰も言われておらず、兄弟それぞれが自分の道を探すように育っていった。私は大学で土木工学を専攻し、卒業後には土木の設計や計画を立てる建設コンサルタントで働いていたが、今は営業を含めて会社の全般に関わっている。
2002年に開設した本社・表参道オフィス&ショールームでデザインイベントなどを開くようになり、2017年にクリエイターのためのギャラリーをつくったことで、人とのつながりが増えたように思う。展示を手掛けるクリエイターたちの熱意が訪れた人々に伝わり、さらに新しい人々を招くことにつながり、思わぬビジネスやアイデアに結びついていく。この流れを直に感じ、社業に良い影響を与えていることは大きいように感じる。
会社運営についても、同じ思いがある。スタッフ全員が積極的に参加し、ものづくりを通して協創を続ければ、それが必ず次の力になると信じている。工場、ギャラリー、ショールームを介して、いろいろな人々とのコミュニケーションを重ねながら、一緒になって新たな形をつくり上げていきたい。今後は、海外への視野をより広げ、「ARAKAWA」の認知度がさらに上がるよう頑張らなくてはと考えている。

荒川 創 荒川技研工業代表取締役

かたちにとらわれない仕事を

荒川 均

荒川技研工業専務取締役

創業時は神田川の近くに事務所兼作業所を構えており、川の氾濫で浸水してしまった際、水没した部品を自宅まで運んで拭く作業を手伝ったことを覚えている。それからしばらくの間、会社と接する機会が無かったものの、大学4年生の時に父が出かける時の運転手として、協力工場をはじめとした関連会社を回った。今振り返れば、社会勉強のためだったと思う。新潟・長岡の工場を訪れた縁もあり、大学卒業後は新潟の企業に就職。7年半、自分がやりたかった雪上車の開発に携わることができた。南極観測隊のための雪上車で、観測隊の方々と関わるという貴重な経験も得た。
今、私は技術部門を担当している。開発の現場で顧客に選んでもらえるような製品づくりや新しい企画を考えることが仕事だ。会長は「アイデアを出すことを常に考えよ」とよく言っており、「ないものをつくる」という精神は私の中にも埋め込まれているように思う。
会社は社員や協力工場のお陰で成り立っているので、みんなの力を合わせ、会社としてできることを最大限に引き出して、今後もさらに飛躍できるよう頑張りたい。50周年記念のイベントでは、普段は工場で働いている社員も含めた全員でギャラリーを訪れ、自分達の製品がこういうところで、こう使われ、海外でも売られているということを理解し、楽しんでもらえたのは良かった。形にとらわれずにやるのが、この会社のやり方だと考えている。力を合わせて、新しいこと、面白いことを常に見つけながら次のステップへ進んで行けたらと思う。

荒川 均 荒川技研工業専務取締役

世界に名を残す製品づくりのために

荒川 真

荒川技研工業営業部マネージャー

1986年、アメリカに販売会社ができた時のこと。私はまだ3歳で、両親が出張しようにも日本に置いていくわけにもいかず、一緒にアメリカに行くことになった。2人とも仕事の際は、言葉もわからないままにホームステイした思い出がある。
荒川技研工業がものづくりの会社ということもあり、大学卒業後に就職したのは、工作機械メーカーだった。8年間、営業に携わる中で、大小さまざまな会社のものづくりに触れ、関心を持って見てきた。現在も営業企画を担当しており、海外の営業や「TIERS GALLERY」の運営、そこでのクリエイターたちとの交渉を主に担っている。「TIERS GALLERY」ができて、5年が経つ。利用者および展示内容は多種多様で、全てクリエイティブ。展示にあたって自社製品を提供しており、驚くような利用方法を目の当たりにすると共に、さまざまな現場でマルチに活用されていることを実感する。
兄弟でいつか話した「世界で名を残そう」という思いを大切にしている。父が開発したARAKAWA GRIPを常に進化させることで、世界にとってのレガシーとなることを模索したい。国内での高い認知度に比べると、海外ではまだこれからだ。今後、世界のさまざまな場でもっと広く使われるよう行動していく。2022年、イタリア・ミラノにショールームを開設し、翌年にはミラノデザインウィークに参加。50周年記念イベントの一環としてクリエイターへのインタビューを一冊にまとめたことは、これからの企業の姿勢を構築する上でも有意義だったと思う。建築家、デザイナー、社員と全てのステークホルダーに、「荒川技研工業はいつも面白い、オリジナルなことをしている」と共感してもらうため、これからも「ARAKAWA」らしさを追求し、研ぎ澄まして、常に新しいことに挑戦していく。

荒川 真 荒川技研工業営業部マネージャー

秋山 かおり

50 GRIPS Director / STUDIO BYCOLOR

荒川技研工業の創業50周年プロジェクト「50 GRIPS」のトータルディレクションを手掛けるのは、STUDIO BYCOLORを主宰するプロダクトデザイナーの秋山かおり。かねてよりプロダクトの視点から同社製品に魅力を感じており、各々が触れる機会が増えることが同時に可能性の拡がりへと繋がるという確信からARAKAWA GRIPとワイヤーで綴じる50周年記念BOOKを提案したことが始まりだった。50名のクリエイターへのインタビューを通し、ARAKAWA GRIPの価値を再認識しながら、国内外のまだ見ぬクリエイターへどう発信していくか、ARAKAWA GRIPを取り巻く社内外のさまざまな人々と対話を続ける日々が続いた。
50周年プロジェクトの一環として、三つの展示会をディレクション。ミラノデザインウィーク 2023ではwe+をクリエイターに迎えて未利用の海苔とARAKAWA GRIPを組み合わせた「Less, Light, Local」を、同年9月には吉添裕人氏を迎えARAKAWA GRIPそのものにフォーカスした「ubique」を開催し、共に、丁寧に製品に向き合ったことから生まれた価値が感じられる大事な機会となった。ミラノデザインウィーク2024では50周年記念BOOKを主とした「biblioteca d‘Oro」を開催予定。これらのプロジェクトが、人々のイマジネーションを少しでも触発し、新たな表現につながる機会になればと願っている。

秋山 かおり
50 GRIPS Members
Kaori Akiyama
Makoto Arakawa
Azumi Mitsuboshi
Masaaki Takahashi
Hajime Kurumata
Junya Maejima
Akira Sakakibara
Shizuka Konishi
Shima Koyama
Special Thanks
Aia Urakawa
Kumi Katsura
Mai Tsunoo
Masafumi Tashiro
Takahiro Tsuchida
Takenari Yoshida
Takeshi Yuda
Yumi Ueno