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新たな視点から見つめ知見を生み出していく

吉泉聡

新たな視点から見つめ知見を生み出していく – 吉泉 聡
2019年、イタリア・ミラノ中央駅の高架下スペースで発表した、TAKT PROJECTの自主研究プロジェクト「glow ⇄ grow」。「光ることで成長し、成長することで光が変わる」をコンセプトに、LEDの光によって硬化する特殊樹脂を光源に滴下し、プログラミングされたライトコントロールでいくつもの姿形をつくり出していった。吊り金具には、ARAKAWAGRIPのBS-60番を使用している(撮影/太田拓実)

TAKT PROJECTがものをつくる際、ジャンルから入ることは少ない。そのプロジェクトに求められる多様なメンバーが結集し、それぞれの専門性や知識を活かしながら形にしていく。
「技術は無色透明だ」と私は思っている。そしてデザインは、これを何色にでも変えられる存在だと捉えている。工学では、ある程度決まった目的のために既存の技術を洗練させるという場面が多いが、人間の精神性も含めて他の可能性を探るのもデザインの一つの役割と言える。つまり、どういった人工物のあり方がありうるか?そういったことを考えていく。
2019年のミラノ・サローネで発表した「glow ⇄ grow」は、800個のLEDをフレームに取り付け、さらに天井から吊ったインスタレーションだ。元々が液体である光硬化性樹脂が、プログラミングされたLEDの光で次第に固まっていく。これもどのようにテクノロジーを使うかを考え、「成長する人工物」という新しい在り方をデザインとして表現した。
人工物は自然からの外乱(干渉)を避け、再現性高く量産されることを多くは是とするが、「glow ⇄ grow」では、その場の自然や状況と呼応しながら人工物が生成されている。樹脂でつくられた製品は、人間がデザインした形の通りに成形され、使われ、早いサイクルで捨てられていくが、このような表現によって異なるマテリアルの価値が見えてくる。身の回りに溢れているものは、一つの意味付けや方法でデザインされたものばかりだということにも気がつく。こういった自主的な展示では、色々なリアクションが得られる。展示をすること自体がリサーチになっており、その知見を起点に多様なクライアントプロジェクトを手掛けている。〈文責/高橋正明〉

吉泉聡

吉泉聡

TAKT PROJECT

山形県生まれ。東北大学工学部機械知能工学科を卒業。エンジニアリングを学ぶ。桑沢デザイン研究所を中退後、2005年より2008年までデザインオフィスnendoに、2008年より2013年までヤマハ株式会社デザイン研究所に在籍。2013年にTAKT PROJECT株式会社を共同設立。TAKT PROJECT代表。

https://www.taktproject.com/ja/

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