

展示で見せるべきものの存在感を意図する場所で浮かび上がらせる
ビジネスの商談を目的とした展示会における空間デザイン。わずか3日間という開催期間において、我々展示会デザイナーに求められるものは、単に美しくデザインするだけでなく、出展社を確実な成功へと導くブースの在り様を実現することにある。必然的に、ブースの各部は「集客」をはじめとした結果に寄与することが求められ、展示台のサイズや文字の高さ、製品の設置方法など、デザインの全てを計算づくで行うこととなる。
荒川技研工業のワイヤーシステムは、パンフレット用の棚やパネルなどの吊り下げものを扱う時に活用しており、そこに求める主な機能は、「存在感を極力なくす」ことや「可変性」とも言うべき自在な調整である。
ワイヤーによるパンフレットの設置は、遠くを歩く来場者をブースに引き寄せる機能を持つ。ワイヤーの存在感の低さはパンフレットのデザイン全体を見せることにつながり、「パンフを手に取ろう」と考える来場者により近づいてもらうきっかけをつくり出す。また、時に「説明パネル」を上部から吊り下げ、浮いたように見せることがある。これは、空間に抜け感を出し、来場者を奥に向かわせるための心理的な仕掛けを企図している。
存在感を抑えることができるワイヤーシステムは、他にもさまざまなブース内の演出の可能性をもたらすだろう。これらの演出の在り方にとって重要なことは、状況に応じて位置調整が可能なワイヤーシステムの調整力の高さにある。〈文/竹村尚久〉