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展示で見せるべきものの存在感を意図する場所で浮かび上がらせる

竹村尚久

展示で見せるべきものの存在感を意図する場所で浮かび上がらせる – 竹村 尚久
コンテンツビジネス総合展「コンテンツ東京 2022」に出展した、映像動画制作や広告写真を手掛ける「monocyte」のブースでは、パンフレットの存在を際立たせるディスプレイ棚に、ワイヤーシステムが採用されている(撮影/根津佐和子)
展示で見せるべきものの存在感を意図する場所で浮かび上がらせる – 竹村 尚久
店舗総合見本市「JAPAN SHOP 2022」内の特別展示「NIPPON プレミアムデザイン」における荒川技研工業のブース。ARAKAWA GRIPおよびピクチャーレールでオブジェを構成するディスプレイが展開された(撮影/根津佐和子)

展示で見せるべきものの存在感を意図する場所で浮かび上がらせる

ビジネスの商談を目的とした展示会における空間デザイン。わずか3日間という開催期間において、我々展示会デザイナーに求められるものは、単に美しくデザインするだけでなく、出展社を確実な成功へと導くブースの在り様を実現することにある。必然的に、ブースの各部は「集客」をはじめとした結果に寄与することが求められ、展示台のサイズや文字の高さ、製品の設置方法など、デザインの全てを計算づくで行うこととなる。
荒川技研工業のワイヤーシステムは、パンフレット用の棚やパネルなどの吊り下げものを扱う時に活用しており、そこに求める主な機能は、「存在感を極力なくす」ことや「可変性」とも言うべき自在な調整である。
ワイヤーによるパンフレットの設置は、遠くを歩く来場者をブースに引き寄せる機能を持つ。ワイヤーの存在感の低さはパンフレットのデザイン全体を見せることにつながり、「パンフを手に取ろう」と考える来場者により近づいてもらうきっかけをつくり出す。また、時に「説明パネル」を上部から吊り下げ、浮いたように見せることがある。これは、空間に抜け感を出し、来場者を奥に向かわせるための心理的な仕掛けを企図している。
存在感を抑えることができるワイヤーシステムは、他にもさまざまなブース内の演出の可能性をもたらすだろう。これらの演出の在り方にとって重要なことは、状況に応じて位置調整が可能なワイヤーシステムの調整力の高さにある。〈文/竹村尚久〉

竹村尚久

竹村尚久

SUPER PENGUIN

展示会ブースのデザインを専門に手掛ける空間デザイン会社・SUPER PENGUIN代表。徹底した「来場者心理」を軸にした「ビジネス空間デザイン」の手法によりブースを構築し、展示会出展社が確実に出展成功するための空間デザインを常に実現させている。

https://www.superpenguin.jp/index.html

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