「PASS THE BATON」の店舗設計にあたって、片山正通氏が持つインテリアの素材や設備へのこだわり方に共感した。「also Soup Stock Tokyo」(設計/永山祐子建築設計)や「PAVILION」(デザイン監修/スマイルズ)などで、荒川技研工業の吊り金具を使い植栽などをディスプレイしたケースはあるが、「Soup StockTokyo」の店舗では、装飾よりも機能を好むという考えを軸に据えている。ドアノブや金具なども、シンプルで使い勝手の良いものを選んできた。
私は作品を展示する際、プロの設置業者に頼み、照明などと合わせて微細なところまで細心の注意を払っていく。高額なアートなどを扱う非日常的なギャラリーでは、ピクチャーレールは家庭を想起させてしまうところがある。展示物の下部に余分なものがはみ出ていたりするのを見ると、残念に思う。
アートをメインにグリーンや家具をレンタルする「KADOWSAN」という会社を手掛ける中で、クライアント企業の空間にアートを設置するための設備がないことがある。もしワイヤーなりの設置を提案できたら、高い天井を活かせる作品が置けるだろうと感じたりする。アートの間口が広くなった今の時代、設置を踏まえた空間の捉え方が変わっていけば、アートの普及もしやすくなるので
はないか。
ワイヤーには、これからも色々な可能性があるように思う。家具が全部吊られたインテリアはどうか、などと夢想するのも面白い。〈文責/高橋正明〉