with GRIP  02  /  Kenichi Shikata

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必要最小限で構成した作品が環境を取り込んでいく

四方謙一

必要最小限で構成した作品が環境を取り込んでいく – 四方 謙一
「Your scenery / あなたがみる景色」。中空に固定された無数の板が、周囲の空気の流れなど環境の変化によって揺れ動きながら、景色を映し、光を放ち、音を奏でる。2023年に開催された個展「Situated situation」/ TIERS GALLERY」では、開口部に広がる景色を室内へと取り込むようにも感じられた(提供/四方謙一)
必要最小限で構成した作品が環境を取り込んでいく – 四方 謙一
2023年、黒島・福浦アートプロジェクトで発表された「Growing scenery / 成長する景色」。建造物に挿入することで場所に応じたかたちを得たステンレスの板が、周囲の景色を映し出す。見る角度によってその景色は変わり、この場所の新たな捉え方を想起させる(提供/四方謙一)

必要最小限で構成した作品が環境を取り込んでいく

私は、早稲田大学芸術学校で建築を学び、美術家の野老朝雄氏に師事した。現在は幾何学や素材の特性によって構成されるパターンを用い、主に彫刻やインスタレーション、写真作品などを制作している。コロナ禍の環境下で始まった「Gravity」シリーズから、頻繁にARAKAWA GRIPを組み込むようになった。このシリーズのテーマは、「地球にまかせる」。重力によって平板が変質し、周囲の状況がさまざまな「かたち」となり現れる作品群である。私がこの立体に与えたのは、必要最小限の切り込みと吊り位置だけだ。最小の構成とし、周囲との純粋な関係を損なわないよう、本器具の採用に至った。
本シリーズは、奥能登国際芸術祭や中之条ビエンナーレ、黒島アートプロジェクトなどで展開してきた。取り巻く環境によって姿が決まる立体群が、その場所の可能性を示しつつ、新たな場をつくっていった。
2023年に開催した個展「Situated Situation」では、主に「Gravity」などの作品群を「TIERS GALLERY」に配した。建築だけが場を構成するわけではない。人やプログラムなど、流動的な状況の変化も含めて場はつくられていく。介入することは、作品の変化を生み、その変化は場所を更新していくことでもある。「周囲の状況が作品をつくり、その状況がこの場をつくっていく」という状況の連鎖とも言える。その「導」となる関係性を考えた個展でもあった。〈文/四方謙一〉

四方謙一

四方謙一

早稲田大学芸術学校を卒業。在学時より野老朝雄氏に師事。主に彫刻やインスタレーション、写真などを制作。奥能登国際芸術際、UBEビエンナーレ、東京ビエンナーレなど、多数の国際芸術際へ出展。また、「MIYASHITA PARK」や「大阪国際空港」などで、常設作品も数多く手掛けている。

https://shikatakenichi.com/

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