

美しさを表現するディテールとしてワイヤーを見せる
「バーニーズ ニューヨーク銀座本店」の内装は、ジェフリー・ハッチソンによるものだ。彼とは、それまで日本の店舗設計を担ってきたピーター・マリノ・アーキテクトに在籍していた頃からの付き合いで、独立した翌年に依頼。開業までに2年を掛けている。アーティストによる家具や彫刻、エレメントを多数採用しており、什器の中には私がデザインしたものもある。
店内は3層で構成されており、延べ床面積は3500 ㎡を超える。世界的に見ても、まれな広さを持つセレクトショップとなった。天井には、荒川技研工業の埋め込み金具を満遍なく配置。ハンガーやマネキン、パーティション、インスタレーションなどを吊るなど、多様な活用をしてきた。
ニューヨークの本部と銀座本店の立ち上げについて打ち合わせを重ねる中で、彼らから「ARAKAWA」という日本語をよく聞いた。アメリカでは既に同社の製品を使用しており、皆よく知っていたのだ。ちょっとしたビジュアルにも人々を和ませるようなストーリーを持たせるのがバーニーズのやり方で、ウェディングドレスをまとったマネキンをディスプレイするならば、ドレスを着たマネキンが宙を舞うような演出をする。こうしたアイデアの実現には、「ARAKAWA」は必須だった。バーニーズでは、ワイヤーを隠さずディテールとして見せ、あえて太いワイヤーさえも使う。ワイヤーで吊っていることを伝え、インダストリアルな美しさを見せるのである。〈文責/高橋正明〉