
平衡がつくり上げる「線」
インスタレーション「Equilibrium」は、ARAKAWA GRIPの新たな一面を浮かび上がらせる試みである。そこには、グリップに圧がかかる受動的な使用ではなく、グリップで圧をかける能動的な使用という発想の転換があった。連なった中空の円柱ユニットにワイヤーを通し、両端をグリップで締めるという構造によって、一本の長い線状の物体をつくり上げている。内部では、グリップを介してワイヤーの引張応力とユニットの圧縮応力が均衡して同時に存在する。
「Experimental Creations」での展示を皮切りに、ミラノサローネにも出展。「Almach Art Gallery」や「TIERS GALLERY」など、空間に合わせて異なる表情を生み出してきたのも、本作品の一つの特徴である。 〈文/村越淳〉