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ワイヤーシステムに宝石のような美しさを見る

エンツォ・カテッラーニ

ワイヤーシステムに 宝石のような美しさを見る – エンツォ・カテッラーニ
パールゴールド加工のARAKAWA GRIPを眺めるエンツォ・カテッラーニ氏。「Catellani&Smithでは、特注照明にARAKAWA GRIPを組み込むことがある」と語る(撮影/Giorgio Oppici)
ワイヤーシステムに 宝石のような美しさを見る – エンツォ・カテッラーニ
カテッラーニ氏の工房でも、荒川技研工業のサンプルキットは大切に保管されていた(撮影/Giorgio Oppici)

ワイヤーシステムに 宝石のような美しさを見る

私が照明器具メーカーを経営するようになったのは、偶然というよりも、必要に迫られたからだ。70年代初頭、私はある照明器具販売店を買収した。顧客の好みが進化してデザインが台頭し、伝統的なシャンデリアがハロゲン電球の普及によって現代的な照明器具に取って代わられようとしていた時期だった。
商売がうまくいかなかったので、何とかしなければならなかった。模索する中で、ランプをつくるための電気部品の世界を知った。さまざまな材料を買い、自分の創造力に従ってそれらの部品を組
み立てた。正統なデザインスキルはなかったものの、シャンデリアを扱うことで得た想像力と素材に関する知識を駆使して、自分の店で直接販売するためのランプをいくつかつくり、生活費をまかなった。
運命的というか、幸運というべきか、代理店・アルタリネアが私たちのランプを見て、ドイツ市場で販売したいという連絡をくれた。私はその提案を受け入れ、1989年8月にフランクフルトで開催されたアンビエンテ・フェアに出展。こうして私は、デザイナーとして、また照明器具メーカーとして、市場に新たなスタイルを提案する冒険を始めたのである。
それ以来、ビジネスは着実に成長し、今では私の作品が世界中で販売されている。
友人のリノ・レドゥッツィからアーティスト・永谷京治の彫刻を見せられた時、私は魅了され、技術的なディテールに気づいた。それ以来、グリップやフックなど、宝石のようなエレガントなテクニカル・パーツの数々を、私はいつも特別なプロジェクトに採り入れている。〈文責/高橋正明〉

エンツォ・カテッラーニ

エンツォ・カテッラーニ

Catellani&Smith

1950年生まれ。1989年、イタリア・ベルガモから数㎞離れた古い工場を修復して、Catellani&Smithを設立。自身の芸術的個性を反映しながら、30年以上に渡って、アートとクラフトの中間的な作品を進化させながら発表し続けている。
エンツォ・カテッラーニの作品は、2カ所の工房で制作されるハンドメイドで、製品の重要性と独自性が語られる照明オブジェである。そしてCatellani&Smithは、デザインに対する独特で個人的なアプローチに、技術分野での最先端のリサーチを組み合わせた、照明分野のリーディングカンパニーである。
博物館や美術館、劇場、ホテル、展示会、イベントなど、プライベート・スペースや公共スペースのための特注品の製作にも携わっている。2018年には、新たな生産拠点を開設。デザインと照明、自然が、会社の基本的価値観に沿った快適な職場環境をつくり出している。

https://www.catellanismith.com/en/

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