
ワイヤーシステムに 宝石のような美しさを見る
私が照明器具メーカーを経営するようになったのは、偶然というよりも、必要に迫られたからだ。70年代初頭、私はある照明器具販売店を買収した。顧客の好みが進化してデザインが台頭し、伝統的なシャンデリアがハロゲン電球の普及によって現代的な照明器具に取って代わられようとしていた時期だった。
商売がうまくいかなかったので、何とかしなければならなかった。模索する中で、ランプをつくるための電気部品の世界を知った。さまざまな材料を買い、自分の創造力に従ってそれらの部品を組
み立てた。正統なデザインスキルはなかったものの、シャンデリアを扱うことで得た想像力と素材に関する知識を駆使して、自分の店で直接販売するためのランプをいくつかつくり、生活費をまかなった。
運命的というか、幸運というべきか、代理店・アルタリネアが私たちのランプを見て、ドイツ市場で販売したいという連絡をくれた。私はその提案を受け入れ、1989年8月にフランクフルトで開催されたアンビエンテ・フェアに出展。こうして私は、デザイナーとして、また照明器具メーカーとして、市場に新たなスタイルを提案する冒険を始めたのである。
それ以来、ビジネスは着実に成長し、今では私の作品が世界中で販売されている。
友人のリノ・レドゥッツィからアーティスト・永谷京治の彫刻を見せられた時、私は魅了され、技術的なディテールに気づいた。それ以来、グリップやフックなど、宝石のようなエレガントなテクニカル・パーツの数々を、私はいつも特別なプロジェクトに採り入れている。〈文責/高橋正明〉