touch GRIP  03  /  Eisuke Tachikawa

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空中に植物を生ける

太刀川英輔

空中に植物を生ける – 太刀川 英輔
東京・三田にある観葉植物専門店「REN」は、いけばな花材専門店「東京生花」の本社ビルの1階にある。一つひとつの植物の個性や美しさを際立たせるため、天井からワイヤーで吊った円形シェルフに植物をディスプレイ
している。棚板は白い粉体塗装を施したスチール製で、直径500 ㎜、550 ㎜、600 ㎜の3種類が製作された。天井にアンカーを打ち、ワイヤーの三点支持により吊られている(撮影/NOSIGNER(Yuichi Hisatsugu))

「REN」は、創業100年を超えるいけばな花材専門店「東京生花」の別事業として企画された観葉植物専門店だ。一つひとつの植物を大事に扱うため、空中に植物を浮かせる棚をつくり、空間をフレキシブルに構成した。
「それぞれの植物に、あたかも盆栽のような存在感を持たせたい」というクライアントとの話から、アイレベルを重視した。陳列される植物は、時々入れ替えられ、サイズも変わる。そこで、高さを自由に調整できるARAKAWA GRIPで固定した。天井から吊られたワイヤーの端部は、プランターの下に貼った磁石でまとめている。
多店舗展開やイベント開催の時でもこの什器だけで展開できるような、軽やかさをつくりたかった。テンション(引っ張り材)でデザインをやり切れば、より軽やかに仕上げることにつながると考えた。
今後の荒川技研工業のプロダクトには、メッキなどの加工を施さない、無垢の素材感を活かす方向性を期待したい。他国からも類似商品が大量に発売されている中で、同社はクオリティーでフラッグシップを取るべきだ。そのためには、ミニマムなデザインと素材感を徹底し、美意識ある表現が求められるだろう。一歩先を行くうちに、なんとしても世界最高のグリップであるというポジションを確立するべきでないかと思う。〈文責/高橋正明〉

太刀川英輔

太刀川英輔

NOSIGNER

デザインストラテジスト/NOSIGNER代表/ JIDA理事長/WDO理事
明日の希望につながるプロジェクトを手掛けるデザインファームNOSIGNER代表。建築、プロダクト、グラフィックなどの高い表現力を発揮し、領域横断のデザインで100以上の国際賞を受賞。
生物の適応進化から創造性の本質を学ぶ「進化思考」の提唱者。
主なプロジェクトに、東京防災、PANDAIDなど。主著『進化思
考』(海士の風、2021年)は第30回山本七平賞を受賞。歴代最年
少JIDA理事長。WDO理事。

https://nosigner.com/

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