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主従関係となる素材が互いに引き立て合う

坂本 英史

主従関係となる素材が互いに引き立て合う – 坂本 英史
撮影/川澄・小林研二写真事務所

テンセグリティーとは、1950年代にバックミンスンター・フラーにより提唱された圧縮・引張の応力を受け持つ、どちらも直線部材のピン接合によって成り立つ構造システム。これを応用し、軽くて強く加工性の良い米ヒバを圧縮材として、強度と信頼性の高いステンレスワイヤーを引張材として、カフェ「Tsuchi」の天井材を成立させた。
テンセグリティーは、3次元的な位置関係が少しでもずれた途端に崩壊してしまうシステムであり、ワイヤー端部の金物により微妙な長さを調整。この繊細で不思議な浮遊感を表現している。部材の太く素材感もある米ヒバは一見すると主役で、細く繊細なワイヤーはその裏方で黒子的な存在と思われるが、構造としても表現としても、互いの素材が引き立て合うことを意識した。このように、主従関係となる各材がどちらも引き立てるように見せる表現は、我々の特徴的なデザイン手法の一つである。〈 文/坂本英史〉

坂本 英史

坂本 英史

隈研吾建築都市設計事務所

1978年生まれ。2002年、京都大学大学院工学研究科建築学専攻を卒業後、隈研吾建築都市設計事務所に入所。

https://kkaa.co.jp/people/eishi-sakamoto/

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